第9回
Jリート市場の展望
これまで、日本のREIT「Jリート」について紹介してきました。世界的には、2023年3月末現在、42ヵ国・地域で上場REIT市場が開設され、上場時価総額は円換算ベースで約260兆円、銘柄数は1,454に達しています。国や地域によって、REIT制度の詳細は異なりますが、投資対象の大部分が不動産であり、収益の大部分(日本は90%超ですが、海外REITもほぼ同等の水準)が投資家に分配される上場商品である点は、共通しており、これらを総称してREIT(リート)と呼んでいます。
REITは1960年に米国で初めて導入され、世界各国に普及しました。Jリートと海外REITで異なる点を1つあげるとすれば、Jリートは法令により比較的安定した賃貸事業しか行えませんが、海外REITでは、そうした規制は少なく、比較的リスクが高いといわれる物件開発を行うREITも多々あります。
日本においては、2023年6月末現在、Jリート時価総額は約16兆円、銘柄数は60となっています。Jリートの時価総額は、東証プライム市場不動産業と同等で、日本において一定程度の市場規模を実現したと言えます。
しかし、REIT市場の歴史が最も長い米国と比べると、GDPとの比較でみて、日本の経済規模が米国の20%を超えるのに対し、Jリートの時価総額は米国REITの10%程度に過ぎません。Jリート市場は2001年の誕生から20年以上が経っていますが、こうした観点からはまだまだ成長の余地があるといえるのではないでしょうか。
当初3,200億円程度からスタートしたJリートの保有不動産は、2023年6月末時点で総額は22兆円、物件数は4,600を超えています。不動産の種類も当初はオフィスビルが大部分を占めていましたが、商業施設、住宅、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設など用途も多様化しています。また、投資商品という観点からは、NISA(少額投資非課税制度)の対象商品、低金利時代の有望な投資先として注目を集めています。
今後、Jリートには質と量の面でのより一層の充実、具体的には、さらなる市場規模拡大への期待とともに、Jリートの果たす経済的な貢献や社会的な役割もますます大きくなっていくものと思われます。